パンダ外交の研究例

【国際政治学・外交史(パンダ)・ヒトと動物の関係学】

パンダを活用した草の根の日中友好促進に関する研究
――ソフトパワー論の視点から――

一、研究概要

日本にやって来た私は、日本人にはパンダが好きな人がとても多いと思うようになった。「たれぱんだ」のようなキャラクターも定着していたり、上野動物園でパンダの香香(しゃんしゃん)の報道の大きさに驚いた。日本と中国の友好を促進したい私は、ソフトパワー論の視点から、草の根の市民レベルでパンダを用いた交流のあり方を早稲田大学大学院国際コミュニケーション研究科で研究し、今よりも中国と日本の友好を進める仕組みを修士論文にまとめ、修了後には文化交流を促進する人材になりたい。

二、研究キーワード

ソフトパワー ハードパワー 日中友好 パブリックディプロマシー 動物 パンダ外交

三、研究動機

大学では経営学を専攻し、来日後に日本語学校に通いながら経営学についての日本語の本を読むうちに、私はもともと公務員だった経験などから、国際関係論という学問に興味が強くなった。そして、経営学ではなく、国際関係論を専攻したいと思うようになった。
こうしたことを考えながら、私は日本のキャラクター(くまもん、ひこにゃん、ふなっしーなど)による地域ブランド化、観光客誘致に関心を持つようになった。そして、中国にもこうしたご当地キャラクターが生まれることを望むようになった。そしていろいろと本を読んで考えたところ、中国は、パンダ外交を古くから行っており、パンダが世界から人気を集めていることを改めて考えた。そして、パンダによる国際親善の促進政策を、日本と中国の友好に注目して研究したいと考えるようになった。

四、志望動機

こうしたことを研究したい私にとって、○○大学大学院〇○研究科は、国際関係論、政治学、経済学、経営学、文化、社会などを学際的に学べる大学院であり、大変魅力的である。私が研究したい内容は、単一の学問だけからよりも、学問分野を横断的に学際的に研究した方がよいテーマであるため、私は○○研究科で研究することを強く望んでいる。○○准教授は、中国人の先輩であり、日本と中国と欧米の国際関係について造形が深い学者でいらっしゃる。友人が○○准教授の研究室の出身で、とても充実した2年間を過ごせたと言っているため、ぜひ私も○○准教授の指導を受けて成長したいと考えている。

五、研究内容

ハーバード大学教授で国際政治学者のジョセフ・ナイ博士のソフトパワーの議論では、軍事力や経済力で他国を屈服させるハードパワーではなく、文化の魅力によって他国を魅了することにより、国際社会での地位を挙げるというソフトパワーの考え方が今後重要だという。

日本の外務省、経済産業省などは、この理論を参考にしてコンテンツ産業の育成と情報発信に力を入れている。経済産業省によれば、コンテンツビジネスとは、「映像(映画・アニメ)、音楽、ゲーム、書籍等の制作、流通を担う産業の総称」と定義されている。
日本での先行研究は、映画、音楽、アニメ、ゲームソフトといった日本のコンテンツをメディア芸術と位置づけ、経済活性化や観光立国に向けて重要な日本文化として発信する試みの研究などが様々ある。最近では、アニメ、マンガ、映画、ドラマなどの舞台の聖地巡礼(コンテンツツーリズム)の研究も行われている。

中国のソフトパワー外交としては、孔子学院を世界各地に設置していることがあげられるが、孔子学院は、孔子、儒教の勉強をしに来た人たちは、中国共産党の宣伝をされたと戸惑うことが多く、孔子学院は世界で評判が悪い。また、卓球外交も古くから行っているが、中国が強いため観戦をしても面白くないと思う外国人は多く、福原愛選手たちの方が人気が出てしまっており、中国の卓球外交はうまく行っているとは言えない。

ジョセフ・ナイがソフトパワーの議論を始めたのは90年代からだが、中国の外交政策を振り返ると中国はパンダ外交を第二次世界大戦期から始めている。パンダ外交により、中国はパンダを平和の使者として他国に贈ることで友好関係を築いて来た。日本とのパンダ外交は、1972年の日中国交正常化を機に始まった。上野動物園にやって来たパンダは日本人の心をつかんだ。その後もパンダ外交は継続している。日中関係は戦時中の問題から友好関係に常にあるとは言えないが、パンダは日本人が中国に対して好印象を抱くことにかなり作用していると思われる。しかし、近頃では中国のパンダ外交は、パンダのレンタル料を取るビジネスだという批判も起きている。

せっかくこれまで中国と日本の友好に役立って来たパンダ外交が批判されてしまっていることは、中国人の私にとって残念なことである。そこで私は、パンダ外交の歴史、日本とのパンダ外交の現状と課題をふまえて、今度の中国がパンダによる交流による友好を促進する具体的な方法を研究を行いたい。

パンダに関する研究には、パンダの歴史(倉持浩2014)、今までのパンダ外交をまとめたもの(家永真幸2011・2017)、日本人がパンダをどのようにとらえて来たのかの歴史的変遷を分析したもの(張予恩2015)などがある。これらの先行研究は、今までのパンダに関する研究であるが、私は今後、パンダを用いたソフトパワー外交をどのようにやっていくことが有益なのかについて研究したい。国家レベルでのパンダ外交のあり方も視野に入れつつ、市民レベルの草の根パンダ外交に注目して研究を進めたい。

六、研究手順

① 世田谷区の八幡山にある大宅壮一文庫において、これまで日本のマスメディアがパンダについてどのように報道して来たのかについて調べ、日本人のパンダへのイメージについて把握する。
② 進学後に、国際関係論、政治学、歴史、文化、社会などに関する様々な授業を履修して、大学院レベルの知識と研究方法を会得する。
③ 中国のパンダ外交の目的、日本人がパンダをなぜ好きなのかを分析する。今のパンダ外交の問題点を把握する。インタビューやアンケート調査を行う。
④ そして、兵庫県、和歌山県、東京都の動物園にパンダがいるため、日本人のパンダ観光の動向を調べたい。また、日本観光の時に初めてパンダを見る中国人についても調べる。
⑤ 他の観光促進のケーススタディも行いながら、パンダを活用した中国と日本の友好を促進する方法を、政府間のマクロな政策からだけではなく、NPOを通したパンダを学ぶための交流といったような草の根レベルにおける中国人と日本人の交流のあり方について研究を進めたい。日本にあるパンダを愛好するNPO、日本人と中国人の交流を促進するNPOなどのフィールドワークによってより効果的なパンダによる日中友好の仕組みを研究したい。
⑥ そして、研究指導を受けながら最終的に修士論文に研究の成果をまとめる。

七、研究意義

この研究は、パンダを活用した交流を促進することで、中国と日本の友好を促進することにつながる研究であり、パンダ外交研究を促進する研究だと考える。また、ソフトパワー論の先行研究では国家間レベルでの研究が行われて来たが、私の研究のように、草の根の市民レベルでの交流の研究はあまり行われていないため、私の研究には先行研究にはなかった面があると考える。また、大学院修了後には、私は文化交流につながる活動をして研究の成果を活かしたい。

八、参考文献

ジョセフ・ナイ(2004)『ソフトパワー』山岡洋一訳、日本経済新聞社
家永真幸(2011)『パンダ外交』メディアファクトリー
家永真幸(2017)『国宝の政治史 「中国」の故宮とパンダ』東京大学出版会
ヘンリー・ニコルズ(2014)『パンダが来た道――人と歩んだ150年』白水社
倉持浩(2014)『パンダ――ネコをかぶった珍獣』岩波書店
張予恩(2015)『革命とパンダ』イースト・プレス
青柳正規(2015)『文化立国論――日本のソフトパワーの底力』筑摩書房
中村伊知哉(2013)『コンテンツと国家戦略――ソフトパワーと日本再興』角川書店
渡辺靖(2011)『文化と外交 パブリックディプロマシーの時代』中公新書

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